真空成形とは

真空成形(成型)とは

真空成形(成型)とは、俗にバキュームと言われているプラスチックの成形方法です。

他にも射出・押出し・ブロー・プレス等々、プラスチックの成形方法は複数ある中で、真空成形は比較的工程がわかりやすい成形方法です。

簡単に言えば、真空成形とは「プラスチックを熱で柔らかくし、真空の力を借りて型に押し付けて形状をつくる」成形方法と言えます。

この成形過程を、イラストも交えながら説明します。

真空成形は、大きな分類で言うと「熱成形」の一つになります。

それは真空成形が、

  • 成形をする上で、プラスチックを加熱し柔らかくする必要がある。
  • 成形をする上で、プラスチックの熱可塑性の特性を利用している。

成形方法だからです。

熱可塑性という言葉が出ましたので、最初にプラスチックの持つ特性についてお話します。

プラスチックとは

まず、プラスチックとはどういうものなのか?

プラスチックの真空成形加工業に身を置いて約30年。

そんなわたしも、実はプラスチックとは何かと深く考えたことがありませんでした。

ちょうど良い機会なので調べてみました。

プラスチックという言葉が登場したのは比較的に新しく1920年(大正九年)ごろのこと、ドイツのノーベル賞学者、H・シュタウディンガー博士が合成によって高分子をつくる理論を世に発表してからです。
この語源はギリシャ語の“プラスティコス″からきているといわれ、これは「形づくる」、「成長する」、「発達する」という意味の接尾語で、英語の“plastic”は「成形力のある」とか「こねて物をつくれる」などという意味の形容詞で、この語尾に“s”がつき、“plastics”という名詞になりますと「可塑(かそ)性をもつもの」という意味になります。

` 塑 ‘とは「土をこねて像をつくること」の意味ですから、可塑性とは「形のあるものをつくることができる性質」と言え、そのような性質をもった物質で、人工的につくられた高分子化合物を“プラスチック”と呼んでいます。

日本では最初のプラスチックであるフェノール樹脂の原料の外観が天然の松脂(まつやに)に似ていたことから、これを“合成樹脂”と呼び、中国ではこの材料の性質を重視して“塑料”と名付けています。

出典:「初歩から学ぶプラスチック(中村次雄・佐藤功共著、工業調査会発行)」

プラスチックとはもともと、「形のあるものをつくることができる性質」=可塑性をもった高分子化合物のことをさす言葉でした。

熱可塑性(ねつかそせい)とは。

‘熱可塑性’という言葉があります。

可塑性の上に熱という文字がつきました。

上述の文献から考えると、熱可塑性というのは熱を加えると形を変える性質と考えて良さそうです。

一方、同じような言葉で‘熱硬化性’というものもあります。

これも熱を加えると形を変えるところまでは同じです。

ただ、形が変わった後の変化に違いがあります。

熱可塑性のものは再び熱を加えれば変化を起こし出しますが、熱硬化性のものは一度硬化してしまうと熱を加えても元には戻りません。

この性質の違いを、前述の「初歩から学ぶプラスチック」ではチョコレートとクッキーを例に上げて説明しています。

チョコレートは熱を加えると液体になり、冷やすと今度は個体になる。

そしてもう一度熱を加えると、再び液体に戻ります。

一方、クッキーは熱を加えて焼き上げると個体になります。

しかし、もう一度熱を加えても焦げるだけで液体には戻りません。

これが、熱可塑性と熱硬化性の性質のイメージです。

真空成形加工に適しているプラスチックの条件の一つは‘熱可塑性’であり、この性質を利用できるからこそ、加熱している間は柔らかく「1気圧」という弱い力でプラスチックに形をつけることができます。

加熱・熱可塑性と熱にゆえんがある加工方法なので、熱成形と呼ばれるのですね。

真空成形(成型)は、柔らかくして押し付ける加工方法。

では、真空成形という加工方法をもうすこしわかりやすくするために、ふとん圧縮袋に例えてみます。

TVショッピング定番のふとん圧縮袋が、真空成形(成型)のヒントになります


ふとんを圧縮袋に入れて、特殊弁に掃除機を突っ込みます。

圧縮袋は軟質のプラスチックを使っていますから、加熱をしなくても元々やわらかくペチャンコになります。

もしこのふとんが鉄製だったら、袋はふとんの形になりますよね。

極端な話、真空成形加工とはこういうことです。

成形機械の流れに似せて、もう一度見てみます。

真空成形加工の説明1

真空成形加工法4

①加熱され柔らかくなった樹脂(プラスチック)を型に押し付け吸引します。

②そして型にへばりついて形成しているところを冷却し、もう戻らないようにするという成形方法です。

真空成形の加工工程をご理解いただけましたでしょうか。

身近な真空成形品

身近にある真空成形品のうち分かりやすいものを二、三あげてみます。

まずは、コンビニなどで売られているお弁当の容器も真空成形品。

それから電気屋さんで吊り下げられているPCケーブル類などの容れ物、天地左右のうち3辺が裏側に折り曲げられて台紙が滑り込ませてあるパッケージ(スライドブリスター)も真空成形品。

みなさん一度はかぶったことがあるでしょう、おめんも真空成形品です。

真空成形の大きなメリットとは?

こんなお客様には、真空成形(成型)はおすすめです。

パッケージは欲しいんだけど初期費用はかけられない

製品の特徴として、代表的なプラスチック成形方法の射出(インジェクション)成形と比較すると、残念ながら真空成形はその精度と形状の再現性には限界があります。

しかし真空成形はどの成形方法にも絶対必要な、成形型の製作費用が安いという大きなメリットがあります。(他方法比較)

熱可塑性樹脂を加熱し柔らかくし、大気圧以下の力で型に吸い付ける成形方法が真空成形です。

かける力が弱いため、少量の成形ならば耐久性の比較的低い素材で作られた型でも成形に使えます。

例えば、木・石膏・樹脂型があげられます。

また成形時に他の成形方法のように、上下から挟み込んだり、上下の隙間に流し込んだりする必要がありません。

「成形をする」というだけならば、上下どちらか一方だけでも加工ができるということも型の費用を抑えることを助けています。

むすび:真空成形(成型)は分かりやすく導入しやすい成形方法

プラスチック成形方法の一つである、真空成形(成形)の加工方法をイラストを使いながら説明しました。

内容をまとめますと以下のようになります。

  • 真空成形とは、プラスチックを熱で柔らかくし、真空の力を借りて型に押し付けて形状をつくる成形方法。
  • パッケージを初め、真空成形品は身の回りでよく目にすることができる。
  • 真空成形は、射出成形などの他のプラスチック成形方法に比べると精度が出づらいという短所もある。
  • 一方、耐久性の低い素材でも成形型を作ることができるため、初期費用を抑えることができるという長所がある。

真空成形品は、製品を収納するトレー、店頭で陳列するためのブリスター、そして製品の宣伝広告に役立つ販促物など成形品の使用途は多岐にわたります。

他の成形方法に比べると、初期費用も抑えることができます。

ぜひともパッケージの一つの方法として、真空成形品の導入をご検討ください。

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