このお面も、とても思い出深いお面です。
お面の生産方法には大きく分けて「成形後塗装」か「印刷後成形」か、とお話をしてきました。が、今回ご覧頂くお面はこの両方をハイブリッドした方法を取っています。「塗装後成形」という方法です。恐らくこの方法で作られたお面は、世の中でこの1種だけではないかと想っています。
ある時、自社で作ったお面を世の中に販売したい気持ちが強くなりました。反応を感じたくなったのです。自分たちで考え作ったお面がどのくらい売れるものなのか(反応があるのか)。ただ予算は微々たるもので、費用をかけずに製作することが第一前提となりました。
成形型用の3Dデーターは作ることが出来る。それを削る切削機もある。問題は着色方法でした。「成形後塗装」の場合、塗装用のカバーが必要になります。通常は銅めっきの金属カバーを使います。当然そのような費用はありません。成形品を切ってカバーの代用にあてることは出来るのですが、曲面をきれいにカットしていくことが困難でした。
と言いますのも、まず作ってみたかったのが隈取のお面だったからです。隈取はきれいな曲線にて構成されています。この曲線に沿って成形品をうまくカットできそうにありませんでした。
「印刷後成形」の場合、シルク版代が色数分かかってしまいます。インクジェットで出力した後成形という方法もありましたが、インクジェット自体も高価なものでした。被った人の顔に隈取が乗るように見せたかったため、どうしても透明材を使おうと考えていました。透明材を使うと最後に白打ちが必要になります。そこを省くと色が浅くなってしまいます。
白のインクジェット出力代は2C計算。インクジェット出力代だけでも1ケにつき500円以上かかってしまう。元々一回の生産で10~20枚しか生産しないことにしていましたので、利益など出るわけがありません。とは言え、大きなマイナスは避けなければばりませんでした。
そこで思いついたのが「塗装後成形」という方法でした。成形の収縮の合わせて印刷のデーターは作ることが出来る。ならばそのデーターに合わせて色を着ける方法を考えればよい。切削機もある。そこで成形用印刷データーに基づいて木の板を切削して行ったのです。
私たちはこの木の板で出来た版を木版と呼びました。治具を作りプラスチック材が動かないようにし、その上から木版を当てて塗装をしました。塗装は盛れますので白打ちをしなくとも、かなりパンチがある仕上がりになりました。
現在(2018.5)もヤフーショップで販売はしていますが、今後増産をするかは分かりません。この希少な方法で作られたお面をお手元に置かれるならば今だと想います。(笑)
仕様。
材質は塩ビ0.5ミリ厚透明材。加工工程は塗装→成形→外周ハンドカット→両耳穴(2工程)→ゴム紐付け→注意シール貼り→袋入れ→梱包・発送。
塗装。
黒(髪・眉毛・目の中ベタ)2工程に分けて→白(髪・口内ベタ)→薄赤(隈取りの外周)→赤(隈取り・口)の5工程。隈取の外周に分からない程度の薄い赤を入れましたが、ボケも手伝って雰囲気のあるものに仕上がりました。
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